HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)- カットオフ値、注意点や解釈などについて

HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)- カットオフ値、注意点や解釈などについて 検査

HDS-Rは認知症のスクリーニング検査として非常に有名ですし幅広く利用されている検査といえます。
ただその方法は曖昧のままであったり、解釈やカットオフ値がいくつかよくわかっていない…なんてこと、あるようです。

今回はHDS-Rの検査方法から実施の際の注意点、カットオフや解釈、捉え方についても解説します。

HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)とは?

HDS-Rは1974年に聖マリアンナ医科大学の精神科医である“長谷川和夫”氏によって作成された認知症のスクリーニング検査です。
“長谷川式簡易知能評価スケール”は,主に一般高齢者から認知症高齢者をスクリーニングする方法として幅広く臨床の領域で使用されてきていました。

HDS-Rの“英語”での正式名称について

HDS-Rは“Hasegawa Dementia Scale-Revised”の略称になります。

HDS-Rの“日本語”での正式名称について

HDS-Rの日本語での名称についてですが、1991 年に一部改訂があったため“改訂長谷川式簡易知能評価スケール”として今に至ります。

HDS-Rの改定の理由は?

1974年に作られた検査ですが、1991年に加藤らによって改訂されました。
この改定の経緯としては、「初版の内容が時代にそぐわなくなったため」…とあります。

もしかして今後も改めて改定されるのかも…しれません。

HDS-Rを使用する目的とは?

前述したようにHDS-Rは一般の高齢者から認知症高齢者の認知症をスクリーニングすることを目的に作成された検査です。
認知症といってもその種類は様々で、アルツハイマー型認知症から脳血管性認知症、前頭側頭側認知症やレヴィ―小体認知症といったものがあげられます。

加えてパーキンソン病も認知症の症状を伴う場合があります。
これらの認知症の種類を明確に判定するには、CTやMRIといった画像診断、SPECTによる脳血流検査といったものが必要になります。
しかし、ほとんどの現場では、これらの設備が整っていない場合がほとんどになります。
そこでどの認知症のタイプであっても、目の前で実際に表面化している症状に焦点をあて、その症状が引き起こしている生活障害の有無と程度を把握する必要があります。

大きな設備、準備は必要なく、かつ短時間で誰でも行えるより“現場的”な検査方法が求められるんですね!

HDS-Rは認知症の診断ではない!

よく勘違いされがちなのは、HDS-Rはあくまで“スクリーニング検査”であり、認知症の診断を可能にする検査ではないということです。
つまり認知機能の低下が認められるかどうかを図ることを目的にしているのであって、診断をするためではない…ということです!

HDS-Rで認知機能の低下が認められた場合は、改めて他の検査、上述した画像検査によって認知症診断をしていくんですね!

つまりHDS-Rは、

  • 〇:認知機能の低下があるかどうか?
  • ×:認知症と診断する!

…この違いは実は非常に大きいと言えます。

適応外の例

簡単、短時間に認知症のスクリーニングを行えるHDS-Rですが、その検査項目は検者による口頭質問で構成されていので“言語性知能検査”の枠組みになります。
つまり失語症や難聴などコミュニケーションを図る上での障害がある場合は検査が困難となり、場合によっては適応外として扱われます。
対策としては“観察式”の認知症検査…FASTやOLD、CDRなどを使用する必要があります。

HDS-Rはあくまで認知症のスクリーニング方法という認識でいないといけないだろうね!
簡便な方法だから臨床で扱いやすい反面、データとしての有用性はちょっと低いのかもしれませんね!

HDS-Rに必要な物品・時間・場所について

ここでは実際の臨床でHDS-Rを行う際に必要な物品や環境について解説します。

必要物品について

HDS-Rに必要な物品についですが、後述する検査項目にも使用するため…

  • HDS-R検査用紙
  • 筆記用具
  • 下位検査用物品

この下位検査用物品ですが、相互に関連がない物品5つになります。
(有)教育評価研究所から販売されているHDS-Rの物品は、はさみ、ブラシ、メガネ、スプーン、サイコロ、軍手の中から5つ選択するようになっています。

HDS-Rの所要時間

HDS-Rは短時間でも行うことができますが、認知症が疑われる対象者には質問に対しての反応をみることで、認知障害の内容を吟味することが必要になるためゆっくりと行う必要があります。
その場合も含めるとおおよそ10~15分程度の所要時間とみることができます。

HDS-Rの実施場所について

HDS-Rを行う場所ですが、検査の特徴や検査項目上以下のような場所が薦められます。

  • 注意散漫にならない静かな場所
  • 時計やカレンダーがない場所

HDS-Rの検査項目の内容と質問の教示について

それでは以下にHDS-Rの検査項目の内容と質問の仕方、教示方法についてまとめてみます!

Q1.年齢

   
教示 ①「お歳はおいくつですか?」
点数 1点:自分の年齢を正しく言うことが可能
注意点 ±2歳は正答とみなす
対象能力 自己の見当識

Q2.日時の見当識

   
教示 ①今日は何年ですか?
②今日は何月ですか?
③今日は何曜日ですか?
④今年は何年ですか?
点数 1点:年月日曜日がそれぞれ正確に言える
注意点 教示後5秒待っても答えられない場合はヒントを提示する
対象能力 日時に関する見当識

Q3.場所の見当識

   
教示 「私たちが今いる場所はどこですか?」
点数 2点:自発的に正解
1点:ヒントによって正解
注意点 ヒントは5秒おいてから家ですか?」「病院ですか?」「施設ですか?」の選択肢を提示する
対象能力 場所に関する見当識

Q4.言葉の記銘

    教示 ①「これから私が言う3つの言葉を言ってみてください。」
②「後でまた聞きますのでよく覚えておいてください」 点数 1点or0点:「桜(or梅)」と正答
1点or0点:「猫(or犬)」と正答
1点or0点:「電車(or自動車)」と正答 注意点 ②の後で聞くことを必ず伝えること 対象能力 作業記憶

Q5.計算問題

   
教示 ①「100引く7はいくつですか?」
②「それからまた7を引くといくつでしょう?」
点数 1点or0点:「93」と正答
1点or0点:「86]と正答
注意点 最初の計算に失敗したら打ち切り,次の設問に進みます。
対象能力 計算と近時記憶(桜、猫、電車の遅延再生)の干渉課題

Q6.数字の逆唱

   
教示 「これから言う数字を逆から言ってください」
①「6-8-2」
②「3-5-2-9」
点数 1点or0点:「2-8-6」と正答
1点or0点:「9-2-5-3]と正答
注意点 最初の逆唱に失敗したら打ち切り,次の設問に進みます。
対象能力 作業記憶

Q7.言葉の遅延再生

   
教示 「先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってください」
点数 2点:自発的に回答可能
1点:a)植物、b)動物、c)乗り物…とヒントを提示した上で正答
注意点 最初の逆唱に失敗したら打ち切り,次の設問に進みます。
対象能力 近時記憶

Q8.物品記銘

   
教示 「これから5つの品物をお見せします.それを隠しますから,ここに何があったかをいってください.順番はどうでもかまいません」
点数 各正答に対してそれぞれ1点(5点満点)
注意点 物品はそれぞれ関連性のない無関係なものを選ぶ
対象能力 非言語性記銘

Q9.言葉の流暢性

   
教示 「知っている野菜の名前をできるだけたくさんいってください」
点数 5個までは採点せず、6個以上に1点ずつを加算していく採点方法
注意点 野菜の名前が重複しても問題ないですが,それは採点しない
途中で言葉に詰まり,約10秒経過しても出てこないときにはそこで打ち切りになる
対象能力 前頭葉機能

HDS-Rの各項目の点数、満点について

HDS-Rの各項目においての配点や満点といった点数については以下の表のとおりになります!

段階 判断基準
Q1.年齢 1点
Q2.日時の見当識 4点
Q3.場所の見当識 2点
Q4.言葉の記銘 3点
Q5.計算問題 2点
Q6.数字の逆唱 2点
Q7.言葉の遅延再生 6点
Q8.物品記銘 5点
Q9.言葉の流暢性 5点

判定方法とカットオフ値

HDS-Rの最高得点(満点)は30点満点です。
そしてカットオフ値としては、20/21点とされています。
つまり、

  • 20点以下:認知症の疑い
  • 21点以上:非認知症

…と解釈できます。

総合点数以外の解釈について

HDS-Rの場合、点数を算出し認知機能の低下の有無を判別するだけでは検査を実施する目的としては不十分になってしまいます。
各設問項目で、被験者がどのような反応を示したかを評価的な視点でみることで今後の対応、治療方針が変わってきます。

意識レベル、注意能力

HDS-Rの検査実施中の被験者の意識レベル、質問項目に対してどの程度集中できているかという注意能力を評価することができます。
もちろんあちらこちらに注意散漫になって、質問に対して集中することができない…なんて場合もあれば、検査中の話題の転導性なども評価対象になってきます。
必要なことに対して注意が向いているか、無関係なことに注意が転動しないかという“注意の配分”の様子も観察できます。

認知症の種類によってこの注意の配分の様子に以下のような違いがみられる場合があります。

  • アルツハイマー病(初期):注意は比較的保持されている
  • 前頭側頭型認知症:周囲への注意が障害されていることが多い(going-may-way症候群)
  • レヴィ―小体認知症・認知症を伴ったパーキンソン病・進行性核上性麻痺:注意の狭窄化、注意の転導性

HDS-Rであきらかに意識レベルの異常が見られた場合は、意識レベルの評価であるJCS、注意能力の異常が見られた場合はTMTといった注意能力の検査を改めて実施するとよいかもしれませんね!

態度

検査者と初対面の場合は特にふさわしい態度、礼節を有しているかを観察します。
これらの所見から人格と感情が保たれているかどうか、社会性やパーソナリティの傾向を判断することができます。

この態度についても認知症の種類によって違いがみられる場合があります。

  • アルツハイマー病(初期):比較的保持されていて問題ない場合が多い
  • 前頭側頭型認知症:馴れ馴れしい、攻撃的、その場にそぐわない態度…が目立つ

もちろん元々の性格傾向にもよる場合があるので、家族聴取などで被験者がどのような性格だったかも把握する必要があります。
加えて、中にはこういった紙面上のテストに対して強い拒否反応を示す方もいる場合があるので、今後の評価、治療介入の参考にすることもできます。

発動性、自発性

質問に対しての答えかたや、答え始めるまで不自然に時間がかかる…なんて場合は発動性、自発性の低下を疑います。
質問課題に対して、促されることなく自発的に解答できるかどうか、その様子も観察対象と言えます。

また、意識障害がないにもかかわらず、考える素振りがなく「知らない」「わからない」と安易に言うこと。
解答ミスをしたことに対して悔しがったり後悔するような素振りを見せず、関心をしめさない場合を“考え不精”と呼ぶことがあります。

認知症の種類によってこの発動性、自発性にも違いがあり…

  • 前頭側頭型認知症:考え不精の反応が高率でみられる(進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症の一部でも観察できる)
  • アルツハイマー(初期):解答ミスに対しての言い繕いが多く、考え不精は少ない

この考え不精という反応は、進行期アルツハイマーの場合無為や思考緩慢に伴った考え不精はあっても、アルツハイマー病自体では独立してみられることは少ないようです。
また、前頭側頭型認知症や皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺で認められる症状ですので、前頭葉検査(FABなど)を行う必要があるかもしれません。

言い繕い

記憶障害をごまかすように言い繕うという反応は、言い換えれば社会接触性を良好に保とうとする反応ととることができます。
これはアルツハイマー病に多くみられる反応です。

例えば【Q2日時の見当識】で、「今日は何年ですか?」「今日は何日ですか?」と質問しても、「新聞みていないから…」「急にきかれたから…」という言い繕いの反応は、アルツハイマー病で多くみられます。
また同じような言い繕いでも、明らかに事実と異なるような“作話”の場合は、アルツハイマー病よりも前頭側頭型認知症に多くみられます。

依存性

HDS-Rの設問に答える際に、すぐに家族や他者を頼ろうとし、そちらを振り向いて代弁を請うようなしぐさを“head turning sign”と言います。
このhead turning signは、アルツハイマー型の認知症の約90%に観察されると言われています。
認知症の種類でも違う反応が顕著にみられ、

  • アルツハイマー病:head turning signが多くみられる
  • 前頭側頭型認知症:head turning signはみられず(going-my-way症候群により)
  • 血管性認知症(注意障害と思考緩慢を主徴とする)、認知症を伴ったパーキンソン病、進行性核上性麻痺:自分で考える事で使える集中力のほとんどを費やしてしまうためhead tuning signはあまりみられない。

ただし、head turning signが認知症の症状による病的なものなのか、元々の性格だったのかもしっかりと見極める必要があります。

精神運動スピード

質問に反応すること、質問内容を考える事、その質問の答えを出すことの一連の思考過程が滑らかに進行せず、長時間を要することを“思考緩慢”と言います。
HDS-Rの各質問項目に対しての反応によって、この思考緩慢の有無を観察することもできます。
思考緩慢は皮質下性認知症の特徴といわれています。

また一部の血管性認知症・パーキンソン病・進行性核上性麻痺・皮質基底核変性症などでも認められる症状のようです。
逆に前頭側頭型認知症の場合はあまり考えずに結論を出す傾向があるために精神運動スピードが上昇している印象を受ける場合もあるようです。

語想起

HDS-Rでは【Q9.言葉の流暢性】で野菜の語想起を行いますが、この語想起は主に前頭葉機能を反映します。
また言語機能にもフォーカスした検査項目であり、注目する点としては、想起スピード、野菜の種類のサブカテゴリー保持、総早期数…になります。
認知症の種類別での語想起については,

  • アルツハイマー病:4~5個の野菜の名前を脈絡もなく列挙した後に答えに窮する
  • 皮質下性認知症:思考緩慢のため解答はひとつひとつになっていまいタイムアップとなる場合が多い。
  • 前頭前型認知症:数個を早口で上げた後に「もうこれでいいでしょ、おしまい!」と勝手に止めてしまう場合多い。

…といったことがあげられます。

保続

脳卒中による右麻痺を有している血管性認知症の場合、保続の症状が出る場合があります。
いまいる場所を尋ねているのに、前の設問の答えである「年月日」をもう一度答えた…なんて場合はこの保続の症状を疑います。

HDS-Rを実施する際の注意点について

HDS-Rを実施する場合の注意点についてですが、

  • 失語症の有無を事前に確認しておく
  • 実施の際には被験者への配慮をする

…などがあげられます。
以下にそれぞれ解説します。

失語症の有無を事前に確認しておく

HDS-Rは“質問式”というその検査形式からも言語能力が正常に保たれていることを前提として成立しています。
被験者が脳血管障害による血管性認知障害を疑う場合の対応としては、

  • a)【Q8.物品記銘】と【Q9.言葉の流暢性】を最初に実施し、HDS-Rが適応できるか確認する
  • b)HDS-Rは実施不可な場合は“観察式”の認知症検査に変更する

…といったものがあげられます。

実施の際には被験者への配慮をする

HDS-Rをつくった“長谷川和夫”氏も、「このようなテストは受ける人がやる気を出して、自分の能力の最大限を発揮するということがないと、正確に評価できません」と述べています。
いかに被験者が「馬鹿にされている!」と感じず、積極的にテストに臨んでくれるように促すのも検者のテクニックといえます。
これはOTのコミュニケーション能力、臨床力がモノを言う部分ですね!

個人的にはHDS-Rを実施する前に事前に「簡単な質問をいくつか行いますが、○○さんには簡単すぎる内容もあるので“バカにしてるのか!”なんて怒らないでくださいね!」といった説明を行うと比較的スムーズに実施できます。

ラポールをきちんと作ったうえで実施するってことが重要だろうね!
患者さんによっては気を悪くしてしまう場合もあるでしょうからね!

HDS-Rの点数で勘違いされやすいこと

臨床現場をみてると、HDS-Rの点数について勘違いされていることが多い印象を受けます。
代表的なものとしては…

  • 点数は認知症の程度を示すものではない
  • 認知症の回復度を測定するわけではない

…という2点です。

点数は認知症の程度(重症度)を確定するものではない

HDS-Rによって点数をつけ、20点/21点というカットオフ値などから認知症の程度、重症度を“確定する”…ものではないということを念頭に置かないといけません。
あくまでHDS-Rはスクリーニング検査であって、判定する検査になります。
なので『HDS-Rの点数が21点だから認知症ではない!』や『HDS-Rの点数が11点だから中等度認知症だ!』と決めつけることは臨床上正しくはないということになります。

ただし、認知症があることが確定している場合は、便宜上、

点数 判定
24±4 非認知症
19±5 軽度
15±4 中等度
11±5 やや高度
4±3 非常に高度

…とされます。

認知症の回復度を測定するわけではない

HDS-Rの点数が低いことと認知症であることはイコールではありません。
同時にHDS-Rの点数がupしたことと、認知症が改善したこともイコールではありません。
よく入院時のHDS-Rと退院前のHDS-Rの点数を比較して認知症が悪化したor改善した…という判断をするケースをみかけますが、本来のHDS-Rの目的から考えると見当違いな解釈ということですね!

HDS-Rの診療報酬や保険点数について

HDS-Rはもともと実施したとしても保険請求をすることができない検査でした。
しかし2018年の診療報酬改定によって、保険診療が可能な検査の一つとして認定されました。
肝心の診療報酬としては“80点”ですので、対象者はHDS-Rの検査を受けた際は3割負担の場合は240円、高齢者の場合は1割の場合で80円、2割の場合でも160円の支払いが発生します。
病院の経営としても、HDS-Rを実施したとしてもいままで診察に含まれていたものが、こうして別で診療報酬として請求できるようになった変化は非常に大きいものになります。

この流れとして考えられることは、認知症の人数の増加に伴い、早急な対応の必要性がでてきていると国としても考えている…と捉えられます。
今後も認知症に対しての医療機関はもちろん作業療法士の対応の必要性が高まってくると考えることもできるでしょうね!

HDS-RとMMSEの違いについて

HDS-Rと同様に、認知症の検査として広く使用されているものにMMSEがあります。

このHDS-RとMMSEの違いについてですが、

  HDS-R MMSE
検査項目 9項目 11項目
検査内容 見当識
即時記憶
計算力
遅延再生(記憶力)
視覚記憶
語想起・流暢性
見当識
即時想起
注意と計算能力
遅延再生(短期記憶)
言語的能力
図形的能力(空間認知)
判定方法 30点満点中20点以下を認知症疑いありとする 30点満点中23点以下を認知症疑いとする

MMSEの場合は自由書字課題や図形模写課題があるため、ペンを使用し書くことができるのが前提となります。
また図形模写では空間認知機能といった血管性認知障害の場合に顕著に病的症状が現れる課題も含まれている点も両者の検査の違いと言えます。

加えて、MMSEは国際的にも使用されている検査という点からも、回復期リハビリテーション病棟におけるリハビリテーションアウトカムの評価対象はMMSEとなっています。

HDS-Rの用途について

HDS-Rによる認知症のスクリーニング検査は、最近では

  • 介護保険申請に使う主治医意見書に必要事項
  • 厚労省から発行された、訪問・通所リハビリテーション計画書

といった公式の書類作成にも記載しなければならない項目になっています。
また高齢者の自動車運転免許証の更新の際にも実施されるようになってきました。

HDS-Rを看護の現場で使用するには?

看護師が臨床の現場でHDS-Rを実施することは非常にまれだと思います。
ほとんどは医師や臨床心理士、作業療法士が実施している印象を受けます。
しかし、HDS-Rの点数による認知機能の低下の有無、各質問項目から読み取れる情報を理解するための知識は必要になってきます。

それによって、看護業務の指示の工夫や環境整備の配慮、リスク管理といったものにもつながってくると考えられます。

HDS-Rを介護の現場で使用するには?

もちろん介護士やヘルパーといった介護スタッフにもHDS-Rから読み取れる情報の解釈は必要になってきます。
思うに、介護スタッフが担う業務は概ねそのクライアントの家族も担う必要がある内容になっています。
つまりそのクライアントに対して、「どうやったら介護しやすいか?」、「どういう状態なら介護しにくいか?」を一番肌で感じることができる職種だと思います。

そんな介護スタッフがHDS-Rからの情報を解釈し、介護の実際の現場に役立たせることで、“介護方法のカイゼン”に繋げることができるんだと思います。

HDS-Rの評価用紙(pdf)ダウンロードするには?

HDS-Rは現在様々な心理検査の販売店によって販売されています。
*用紙自体はpdfのデータとして手に入れることができますが著作権などの関係を考えれば、きちんと購入することをおすすめします。

まとめ

今回は認知症のスクリーニング検査として広く使われているHDS-Rについて解説しました。

作業療法士にとっても馴染みのある検査ではありますが、あくまで“スクリーニング”ということを念頭に置いておく必要があります。
HDS-Rの結果だけに捉われてしまい、もっと背景にある課題や問題点などを見過ごさないようにする必要がありますね!

HDS-Rに限ったことではないけど、包括的に症状をみて判断するって視点は重要だろうね!
検査一つの結果にこだわるのではなく、複数の検査結果を活かしていくって考えでしょうね!

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