療法士のいやしごと

非臨床作業療法とは?【 医療、介護分野以外で活躍するには?】

養成校時代も含めると“作業療法”という分野には20年近く関わっていることになります。
臨床経験を積んでいくと同時に、様々な社会経験も重ねていくと、作業療法の汎用性の高さに気づくことがあります。

そこで今回は、作業療法士が医療や臨床以外でどう活躍できるか?
…について考えてみたいと思います。

…なんて方が参考にしていただければ幸いです。

非臨床作業療法とは?

“非臨床作業療法”という言葉を検索してみても、日本ではまだヒットすることはありません。
ただ、英語訳の“Non-clinical occupational therapy”では結構検索結果としてヒットすることから、海外では徐々に浸透しているのかもしれません。

大それた定義…でもないですが、敢えて言えば…

従来の臨床現場(病院、施設、クリニックetc)以外の場で行われる作業療法(もしくはその一部)

…かなと。

海外では“Non-clinical occupational therapy”という様々な作業療法士の働き方、活躍の仕方を検討している動きがすでにあるのでしょうね。

臨床以外での作業療法を考える必要性

作業療法士が、“作業療法”を医療や臨床の現場以外で活躍を考える背景としては、次のようなパターンが考えられます。

以下に詳しく解説します。

作業療法の発展

作業療法士ならだれでも一度は考える「作業療法ってなんだろう?」という疑問。
扱う範囲や領域の広さもあって、その定義って定まっているようで一般の人にはまだまだピンとこないような印象も受けます。
今後、もっと社会や生活に“作業療法”という分野が浸透し、認知度を高め、発展していく方法はどんなものがあるか?

協会はもちろん、作業療法士個人のレベルでも、多かれ少なかれ考えることはあるかと思います。

臨床で働くことの限界

長く臨床で作業療法士として働いていると、どうしても“限界”を感じてしまう時があります。
その限界ってのは、技術面でも、知識面でも、興味の範囲でも、生活との両立でも様々かと思います。

長く臨床で働いていれば、必ず多少なりとも“惰性”で過ごす毎日になってしまうことってあるはずです。

モチベーションや燃え尽き症候群

臨床にでてすぐは、様々なことを覚えなきゃいけないし、自分の技術が足りないことを自覚するからこそ、毎週のように研修に行き、文献や論文を読みあさっていたかと思います。
でも、ある程度臨床をこなせるようになり、それなりに経験を積むと同時に、生活スタイルも変わってくると、作業療法士として働くことが主に「生活のため」になってきます。

知識や技術習得のための意欲が低下し、ある種のバーンアウト症候群のようになってしまうパターンは、中堅以降に多くみられる印象を受けます。

自分のキャリアの成長

それでも“作業療法士”として自分のキャリアをどう発展させようと奮闘する場合もあります。
多くは新しい資格や認定の取得をしたり、職場や領域を変えたり、人によっては起業という形をとってキャリアを形成する方もいると思います。

どんな形にしろ、「現状では満足できない」という状態かと思います。

年収のアップ

作業療法士=医療職ということもあり、一般企業よりは安定している、年収が高い…というイメージを持たれます。
たしかに比較的安定はしているのでしょうが、年収の額面のみで言えば…少し物足りないと思う方が多いのも事実。
ましてや、養成校の学費の奨学金ローンをまだ支払っているからなおさら生活に余裕はない…という人も多くいるようです。

臨床で多くの患者を診れば、年収がアップする…というわけではないのが、難しいところともいえます。

好奇心

繰り返しになりますが、作業療法に関われば関わるほど、その汎用性の高さを実感することがあるはずです。
「もしかして○○って作業療法と組み合わせるのでは??」なんてアイディアがふっと湧いたことがある…なんて経験あるかと思います。

こういった経験もあって、好奇心が旺盛な作業療法士って結構多いような気がします。

作業療法士が非臨床で活躍する可能性を考えるには?

では、実際に臨床以外の現場である“非臨床”で活躍するためには、どのような能力や視点が求められるでしょうか?
考えるに、次のようなものがあげられます。

以下に詳しく解説します。

幅広い知識と経験

“幅広い知識”ってのは、カテゴリーレス・ジャンルレスな知識を意味します。
従来の作業療法に関わる医療・介護・健康系の知識はもちろん…

…といった知識です。

重要なのって、どの知識も“完璧に知っている”ことではなく、“ある程度知っている”ってこと。
そういった多くの“ある程度の知識”をつなぎ合わせ、実行、実践し“経験”に昇華することのほうが重要なんだと思います。

俯瞰的な視点

ひとつの知識、情報、分野を俯瞰的に見る視点って“非臨床作業療法”には必要です。
ひとつのことを深めていくスペシャリストよりも、より幅広く俯瞰的にみることができるゼネラリストの方が向いていると思います。

作業療法士が非臨床の現場で活躍している事例

では、実際に作業療法士が臨床とは離れた“非臨床”の現場で活躍している事例を紹介します。

e-スポーツ選手の支援

一般的にも認知されてきた“e-SPORTS”の選手の支援に作業療法士が活躍しています。
e-スポーツ選手の健康教育や社会的スキル、怪我のリスク回避などを支援しているようです。
E-SPORTSHP公式サイト[wp-svg-icons icon=”new-tab” wrap=”i”]

UXデザイナー


“UX(ユーザーエクスペリエンス)デザイナー”とは…
あらゆる商品やサービスにおけるユーザーの行動を導き、ユーザーがやりたいことを「楽しく・心地よく」実現するためにサービスや製品を設計するデザイナー
…を言います。
この“ユーザーエクスペリエンスデザイン”の背景には…

…がありますが、なにより商品やサービスを使用する人の“動作”や“操作性”といった作業療法士が得意とする要素に目を向けることが求められます。
実際にワシントンでUXデザイナーとして活躍している“ヴァネッサ・リゴー”は、作業療法士としての知識と経験をUXデザインに活かしているようです。
ヴァネッサ・リゴー公式サイト

ボードゲーム開発会社




子供向けボードゲーム開発会社である“Sensational Learners”は、小児作業療法学の著名な研究者である“ルーシー・ジェーン・ミラー”氏によって創始されました。
現在はルーシーの他に複数の作業療法士のスタッフが小児向けのボードゲーム開発を行っているようです。
Sensational Learners公式サイト

経営コンサルタント

経営コンサルタントの企業として有名な“船井総研”には、“医療支援部”というものがあります。
ここでは作業療法士としての臨床経験と経営コンサルタントとしての知識を掛け合わせて、病院やクリニック経営コンサルタントを行っています。
船井総研 公式サイト

旅行代理店


画像引用:リハビリ推進センター株式会社 公式サイト

障害を持った人や高齢者の“旅行に行きたい”を叶えるための支援です。
実際に“リハビリ旅行士”という民間資格をつくり、障害を持つ人の旅行を支援している“リハビリ推進センター株式会社”があることから、今後需要は増えてくるとも言えます。
リハビリ推進センター株式会社 公式サイト

まとめ

今回は、作業療法士のキャリアとして“非臨床作業療法”という選択肢について解説しました。
今後ますます医療や臨床の現場以外で活躍する作業療法士は増えてくると思います。
実際に国内外では非臨床で活躍している作業療法士は増えてきていますからね。

そのためには幅広いジャンルレスな知識と経験、俯瞰的な視点が必要なんでしょうね。

非臨床での可能性を考えることで、改めて目の前の仕事への意欲が向上する気がするわね。
ただ大事なのって“受容的な仕事”ではなく“能動的な仕事”ですから、こういう考えがクリエイティブな仕事の仕方なんだと思うんですよね。
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